教育学域

教員紹介

浜田博文

浜田博文

はまだ ひろふみ
Hirofumi Hamada
職位 教授
専門研究領域 学校経営学
取得学位 博士(教育学)
E-mail education-hamada [_] human.tsukuba.ac.jp
冒頭の「education-」を削除し、[_] を半角アットマークに置換してお使いください。
個人ホームページ http://researchmap.jp/hirofumihmada/

経歴

山口県下関市生まれ。広島市立牛田小学校、牛田中学校、広島基町高等学校卒業。
1984年、筑波大学第二学群人間学類卒業。
1989年、同大学院博士課程教育学研究科単位取得退学。
日本学術振興会特別研究員、鳴門教育大学助手、東京学芸大学講師・助教授を経て1998年に筑波大学講師。2002年より助教授。
1996年3月~同年9月、Barry University(米国フロリダ州)で在外研究。
2005年3月~2006年3月、University of Southern California(米国カリフォルニア州)で在外研究。
2008年7月より教授。

研究分野

学校改善、校長職論、教師教育、アメリカ学校経営政策、スクールリーダーシップ

研究テーマの概要

これまで様々な研究に取り組んできましたが、大きな柱で整理すると、2つの系統の研究になると思います。

1.学校組織とその改善に関する研究

 第一は、組織論の観点から「学校の自律性」を捉え、一つひとつの学校がその内部に「自律性」を形成・維持するための諸要因を明らかにし、学校経営実践の改善に貢献することです。常にこのことを念頭に置きつつ、国内外の学校経営実践に関与させていただくとともに、研究者の方々と共同で研究に取り組んできました。
 個人研究としての成果をまとめたものが、『「学校の自律性」と校長の新たな役割』(単著,一藝社,2007)です。アメリカの学校経営の政策と実践を研究対象に据え、1980年代後半~1990年代の「学校を基礎単位とした教育経営(School-Based Management: SBM)」のもとで、「学校の自律性」確立がどのようにめざされ、学校経営の内実にいかなる変化が生じ、校長にどのような新たな役割が要請されたのか、を明らかにしました。
 国内外の学校を訪問調査しながら実感したことは、日本でもアメリカでも、公教育の統治構造の変化が、学校の内部組織、さらには教授・学習過程のありように少なからずインパクトを及ぼしてきているということでした。ただし、学校経営の実践はさまざまな課題に直面しながら動いているにもかかわらず、そのような学校経営の現実を、研究者は的確に捉え切れていないのではないか、と感じてきました。そんな問題意識を同じ学会の同世代の研究者と共有し、20012003年の3年間の日本教育経営学会の課題研究企画を通じて、学校経営の現実態と学界の知的生産過程とのリンケージによる学校経営研究のあり方を「臨床的アプローチの構築」というテーマで考えました。そのときの研究成果は、『学校経営研究における臨床的アプローチの構築―研究-実践の新たな関係性を求めて―』(小野由美子・淵上克義・浜田博文・曽余田浩史編著,北大路書房,2004年)にまとめられています。
 それ以降も、積極的に学校へ出かけていって、学校改善過程とその要因に関する事例研究を地道に進めました。同じ学校経営学研究室で学んでいた4人の若手研究者たちも執筆に協力してくれてまとめた本が、『学校を変える新しい力教師のエンパワーメントとスクールリーダーシップ(浜田博文編著、小学館、2012)です。この本は韓国語と中国語にそれぞれ翻訳されて、韓国と中国でも刊行されています。2021年には電子版も刊行されて入手しやすくなりました。
 2007年に学校評価が学校教育法によって制度化されましたが、学校評価というシステムが本当に個々の学校の継続的な改善に寄与するのかという疑問をもって取り組んだのが、アメリカの学校評価を対象とした調査でした。20092011年度の3年間に科学研究費の交付を受けて,「現代アメリカの学校認証評価における学校改善支援機能に関する学術調査研究」のタイトルで他大学の4名の研究者と共同研究を進めて、当時のアメリカで進んでいた初等・中等教育段階の学校の認証評価の広がりの実態を明らかにしました。その成果は研究成果公開促進費の補助を受けて『アメリカにおける学校認証評価の現代的展開』(浜田博文編著、東信堂、2014)として刊行できました。アメリカにおいて19世紀末に始まった任意の学校認証評価が,近年の学校アカウンタビリティ政策のもとでどのように変容しつつあるか,最新の動向について考察したものです。

2.教職の専門性と教師教育に関する研究

 大学院に進学したばかりの頃のメインテーマは教師教育でした。アメリカにおける教師の現職研修の改革について研究していましたが、いまひとつ自分の問題意識を明確にすることができずにいました。そのような状況を大きく変えてくれたのは、30歳代の約10年間にわたってほぼ同世代の研究仲間十数名で続けた共同研究でした。「教師養成教育と教育学教育の連続性に関する研究」と自称して、まったくの手弁当で年に数回の合宿研究会と学会発表を地道に続けました。そしてようやく研究成果公開促進費の補助を受けて出版に漕ぎ着けた成果が、『「大学における教員養成」の歴史的研究―戦後「教育学部」史研究』(TEES研究会編,学文社,2001年)です。この研究の根底には、日本における教育学の研究・教育と教員養成教育との一筋縄ではいかない関係性への問題意識がありました。この図書が刊行された後の20年間を振り返ると、その関係性は益々混迷を深め、教育学研究が様々な意味で危機的状況を迎えているように思われます。
 近年では、教員養成の問題だけではなく、教職の専門性という鍵概念自体が大きな揺らぎのもとにあるのではないか、という疑問から出発した共同研究にも取り組んできました。新自由主義的教育政策のもとで、教職が様々な意味で相対化され、「教職の専門性」は公教育システムにおける自明の前提ではなくなりつつあります。学校ガバナンス改革が進行する中で、教職の位置は相対化されるだけでなく、他のアクターと比べて劣位化されているのではないか。そのような疑問をもって、20162018年度の3年間に科学研究費の交付を受けて取り組んだ研究の成果は、やはり研究成果公開促進費の補助を受けて『学校ガバナンス改革と危機に立つ「教職の専門性」』(浜田博文編著,学文社,2020年)という図書になりました。この探索的な研究を通じて、公教育における教職の相対化が確実に進行していることを実感すると同時に、教師自身の「専門性」を根底で支える実体的な拠り所がきわめて曖昧になり脆弱になっている様相が明らかになりました。
 このことは、教職の専門職性の支持基盤たるべき専門職組織の未形成、あるいは教育学研究と「教職の専門性」の相互関係性の脆弱さなどの問題を映し出すと考えられます。
 以上の2つの文脈で取り組んできた研究は、現在科研費の交付を受けて取り組んでいる「校長のリーダーシップ発揮を促進する制度的・組織的条件の解明と日本の改革デザイン」(20182022年度、基盤研究(A)の土台になっています。昨年からコロナ禍のもとで調査の停滞を強いられましたが、そのようななかでも国内調査は地道に続けているところです。さらに、この科研費の最終年度前年度の申請により「校長のリーダーシップ発揮を促進する校長の社会ネットワークの構造とその構築」(20222026年度、基盤研究(A)が採択されました。前の科研で実施した全国調査に続く大規模な質問紙調査をこれから実施するとともに、コロナ禍の渡航制限が緩和され次第、海外調査を再開する予定です。

主要著書・論文

著書

田博文編著,『学校ガバナンス改革と危機に立つ「教職の専門性」』,学文社,2020年
浜田博文編著,『学校経営[MINERVAはじめて学ぶ教職9]』,ミネルヴァ書房,2019年
日本教育経営学会編(編集委員長),『講座現代の教育経営』,学文社,2018年
日本教師教育学会編(共編著),『緊急出版 どうなる日本の教員養成』,学文社,2017年
日本児童教育振興財団編(編集委員),『学校教育の戦後70年史 1945年(昭和20)―2015年(平成27)』,小学館,2016年
浜田博文編著,『教育の経営・制度』,一藝社,2014年
浜田博文編著,『アメリカにおける学校認証評価の現代的展開』,東信堂,2014年
浜田博文編著,『学校を変える新しい力―教師のエンパワーメントとスクールリーダーシップ』,小学館,2012年
浜田博文編著,『「新たな職」をいかす校長の学校経営』,教育開発研究所,2010年
浜田博文編著,『「学校の組織力向上」実践レポート』,教育開発研究所,2009年
浜田博文著『「学校の自律性」と校長の新たな役割』,一藝社,2007年
小野由美子・淵上克義・浜田博文・曽余田浩史編著,『学校経営研究における臨床的アプローチの構築』,北大路書房,2004年
TEES研究会編(共編著)『「大学における教員養成」の歴史的研究』,学文社,2001年

論文

朝倉雅史・諏訪英広・髙野貴大・安藤知子・織田泰幸・加藤崇英・川上泰彦・北神正行・佐古秀一・髙谷哲也・木下豪・浜田博文「校長のリーダーシップ発揮を促進する制度的・組織的条件の解明と日本の改革デザイン(2)―校長のリーダーシップ実践とその関連要因に関する基礎的分析」『筑波大学教育学系論集』第46巻第1号,202110月,pp.17-33.
浜田博文・諏訪英広・髙谷哲也・朝倉雅史・髙野貴大・加藤崇英・織田泰幸・安藤知子・佐古秀一・北神正行・川上泰彦「校長のリーダーシップ発揮を促進する制度的・組織的条件の解明と日本の改革デザイン(3)―初任期小学校校長インタビュー調査の分析―」『筑波大学教育学系論集』第45巻第2号,2021年3月,pp.31-49.
浜田博文・諏訪英広・朝倉雅史・髙野貴大・安藤知子・織田泰幸・加藤崇英・川上泰彦・北神正行・佐古秀一・髙谷哲也「校長のリーダーシップ発揮を促進する制度的・組織的条件の解明と日本の改革デザイン(1)―スクールリーダーの職務環境・職務状況に関する基礎的分析―」『筑波大学教育学系論集』第45巻第1号,2020年10月,pp.43-68.
Hirofumi Hamada, Governance and Expertise in the Teaching Profession: An Analysis of Contemporary Japanese Educational Reforms, ECNU Review of Education, Vol. 2(2), June 2019, pp.1-12. DOI: https://doi.org/10.1177%2F2096531119853085

「公教育の変貌に応えうる学校組織論の再構成へ─『教職の専門性』の揺らぎに着目して─」(『日本教育経営学会紀要』第58号,第一法規出版,2016年6月,36-47頁)
「ガバナンス改革における教職の位置と『教員育成指標』をめぐる問題」(『日本教師教育学会年報』第26号,2017年9月,46-55頁)
「「学校ガバナンス」改革の現状と課題―教師の専門性をどう位置づけるべきか?―」(『日本教育経営学会紀要』第54号,第一法規出版,2012年,23~34頁)
「小学校の学校改善過程に及ぼす組織的要因に関する研究―教師の自律と協働の連関要因に着目して―」(『筑波大学教育学系論集』第33巻,2009年3月)
「アメリカ学校経営における共同的意思決定の展開と校長の役割期待変容―1970年代~1990年代フロリダ州におけるSBMの展開過程を対象として―」(『日本教育経営学会紀要』49,第一法規,2006年)
「『学校の自律性』研究の現代的課題に関する一考察」(『学校経営研究』29,大塚学校経営研究会,2004年)

所属学会、その他の研究活動

日本学術会議連携会員、日本教育経営学会(理事)、日本教育学会(理事)、日本教育行政学会(理事)、日本教師教育学会(会長)、日本高校教育学会(会長)American Educational Research Association(AERA)

1999年、日本教育経営学会研究奨励賞を受賞。
2005年、日本教育経営学会学会賞を受賞(共同受賞)。
2008年、日本教育経営学会学術研究賞を受賞。
2008年、Council for Educational Change (Florida)から”Certificate of Appreciation”を受賞。

最近交付を受けた科研費

平成18~20年度日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究(C)
 テーマ:学校の「自己評価」機能を促進する組織的要因に関する研究
平成19年度(財)文教協会調査・研究助成金
 テーマ:小・中学校における学校教職員の多様化の進展と協働の実態に関する基礎的研究
平成20年度(財)文教協会調査・研究助成金
 テーマ:小・中学校の課題多様化に対応した学校組織の協働のあり方に関する調査研究
平成21~23年度日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究(B)
 テーマ:現代アメリカの学校認証評価における学校改善支援機能に関する学術調査研究
平成23~25年度日本学術振興会科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金) 挑戦的萌芽研究
 テーマ:スクールリーダーシップの日本的特性に関する研究
平成27~29年度日本学術振興会科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金) 挑戦的萌芽研究
 テーマ:新たな学校ガバナンスにおける「教育の専門性」の再定位
平成30~34年度日本学術振興会科学研究費補助金 基盤研究(A)
 テーマ:校長のリーダーシップ発揮を促進する制度的・組織的条件の解明と日本の改革デザイン

担当授業

教育学学位プログラム:学校経営学特講スクールリーダーシップ論、学校経営学研究法Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ
教育学類:学校経営論、学校経営論演習、教育学実践演習
教職科目:学校経営概説、教職実践演習



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