教育学学位プログラム(後期)

研究室紹介

道徳教育学

道徳教育学

担当教員

田中 マリア たなか まりあ TANAKA Maria


専門研究領域の沿革

本専門研究領域は1975年に、道徳教育を専門に研究する学問領域として、日本の大学院博士課程に初めて独立したかたちで研究室を設置して以降、初代担当教官である井上治郎教授をはじめ、遠藤昭彦教授、福田弘教授、吉田武男教授らがそうした責任と自覚に基づき、戦後の日本における道徳教育学の構築・発展・普及に努めて参りました。

初代の担当教官である井上治郎教授は戦後日本の学校教育現場において「道徳の時間」が設置されて間もない昭和40年代から50年代にかけて文部省の中学校道徳担当の教科調査官として勤め、当時の道徳授業の在り方や教材をめぐる議論に一石を投じて参りました。また、二代目の遠藤昭彦教授はアメリカをフィールドとして民主主義社会における道徳教育の動向を中心に、新たな授業実践の可能性を拓くことに努めて参りました。さらに三代目の福田弘教授はヨーロッパ評議会を中心に今日の国際スタンダードとも言える、ヒューマンライツエデュケーションの視座に立った道徳教育の提唱・普及に尽力して参りました。そして、四代目の吉田武男教授はアメリカを中心とする心理主義的な道徳教育とは一線を画した、生活や社会とつながった道徳実践に立ち返るべく、西洋だけでなく東洋の思想も積極的に取り入れるなどしながら生活ベースの道徳教育論を展開して参りました。

いずれの世代も、時流にのった方法だからと表面的な理論をなぞるだけで安易に取り入れようとすることなく、その背後に据えらえている思想や理念、社会背景などのバックグラウンドや概念などについても考慮した上で、できるだけ正確に理解し、発信することに努めて参りました。

以上のような過去の実績の上に、現在は、ルソーで学位を取得しながら漢学の学歴と和文化(狂言)のお稽古歴も有する田中マリア准教授が、多文化共生時代に求められる道徳教育の在り方について研究を進めているところです。

博士学位取得者

(1) 課程博士

氏名

研究テーマ

取得年

諸冨  祥彦

人間形成における<エゴイズム>とその克服過程に関する研究

1992

田中 マリア

ルソーの教育思想に関する研究―宗教を基盤に据えた人格形成論に着目して

2006

那      楽

中国の基礎教育課程改革の転換期における道徳教育の変容
―「主体性」の育成に着目して―

2017

川上  若奈

ゴーチエにおける芸術教育思想の特質
―人間形成論的側面に着目して―

2020

(2) 論文博士

氏名

研究テーマ

取得年

福田   弘

ペスタロッチの教育思想における宗教的基礎―その形成と展開

1999

吉田 武男

シュタイナーの人間形成論に関する研究―特に道徳教育に着目して―

2006

吉田   誠

理想主義・現実主義および行為主義・人格主義の相補軸に基づく道徳教育の
方法原理―デュルタイの相対化の射程を克服する相補化の方法論―

2020

小林  将太

ジャスト・コミュニティ・アプローチによる道徳教育の拡充に関する研究
―コールバーグとその後継の理論と実践に着目して―

2020


入学者出身大学と勤務先

(1) 入学者出身大学:神戸大学工学部、筑波大学(日本語・日本文化学類、人間学類、比較文化学類、教育学類)、新潟大学教育学部、二松學舎大学文学部、大阪産業大学経済学部、東京女子体育大学体育学部、(中国)東北師範大学、東京外国語大学
(2) 勤務先(大学):大阪教育大学、尚絅大学、聖徳大学、筑波大学、新潟清陵大学、明治大学、中京大学、大阪国際大学、帝京大学教職大学院、NITS 独立行政法人教職員支援機構、山形大学、関西外国語大学、明治学院大学、その他非常勤先兼務(多数)

道徳教育学研究室メンバーにおける近年の研究テーマ

幼児期からの寛容の醸成に関する研究、ドイツにおけるヴァルドルフ幼稚園の研究、中国と日本の道徳教育の比較研究、情報モラル教育の研究、芸術教育と道徳教育に関する研究、フランスと日本の道徳教育の比較研究、スイスと日本の道徳教育の比較研究、人権教育と道徳教育に関する研究、日本の伝統の継承と文化の創造に関する研究、台湾の生命教育プログラムに関する研究、子どもの権利に基づくアイルランドの道徳教育に関する研究、多様な性の在り方を念頭においた道徳教育に関する研究、フレーベルの人間形成論に関する研究、河合栄次郎の教育思想に関する研究など。

OB・OGの声

「大学院時代を振り返って」(帝京大学教職大学院、細戸一佳)

道徳教育学研究室に入ってよかったと思えることの一つに、内地留学にいらっしゃっていた現職の小・中学校の先生方と、大学院のゼミや研究会で交流する機会に恵まれたことがあげられます。内地留学の先生方からは、教育現場における児童・生徒の様子や道徳教育の実践について貴重なお話を伺うことができました。また、先生方の道徳教育にかける姿勢や児童・生徒に対する熱意には、研究という枠をこえ、人間として学ばせていただくことが多かったように思います。

「道徳教育学研究室の魅力」(中京大学、原口友輝)

当研究室は、道徳教育の思想から実践までの幅広い領域を研究する研究室です。当研究室の学生は、こうした道徳教育について、理論・実践さまざまなアプローチから取り組んでおります。道徳教育は人間形成の根幹に位置づくものであり、その意味で教育のどの分野・領域の研究をする際にもかかわってきます。また、「道徳」あるいは「道徳性」という言葉は人によって解釈が異なってきます。こうした理由から、道徳教育について研究することは難しいときがあります。しかしその分やりがいのある研究であるとも言えるでしょう。

「大学院進学を考えている皆さんへ」(関西外国語大学、川上若奈)

道徳教育学研究室?大学に入ってまで道徳教育を受けたくないよ…。と思った皆さん、違います!この研究室は、道徳教育について考える研究室です。ためしに、平成29年版の中学校の学習指導要領を見てみましょう。「特別の教科 道徳」の内容として、22個の項目が書かれていますね。多すぎるんじゃないか、逆にこれが足りないんじゃないか…そんなことを検討してもよし、これらの内容をどう教えるかについて考えてもよし、外国ではどんなことが教えられているのだろうと調べてみてもよし。道徳教育について興味のある人たちが集まる、この研究室のメンバーや先生方、先輩方と雑談や議論をする時間は、何物にも代えがたいものです。身近なようで得体の知れない道徳教育について、共に考えてみませんか。

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