学校経営学
担当教員
教 授 浜田 博文(はまだ ひろふみ)HAMADA Hirofumi
専門研究領域の沿革と概要
東京教育大学以来、石三次郎教授、吉本二郎教授、永岡順教授、朴聖雨教授、小島弘道教授が築いた学校経営学の分野を引き継いでいる。本研究室は各自の個人研究とともに他大学の研究者とともに数々の共同研究に取り組み、学界・社会への積極的な発信と貢献を続けてきた。例えば、「教師の力量形成と研修システムの改善に関する実証的研究」(1983年)、「学校管理職の養成システムとプログラム開発に関する総合的研究」(2003年)などである。こうした共同研究の成果は、下記の図書等にまとめられている。
・ 小島弘道編著,『校長の資格・養成と大学院の役割』,東信堂,2004年
・ 浜田博文編著,『アメリカにおける学校認証評価の現代的展開』,東信堂,2014年
・ 浜田博文編著,『学校ガバナンス改革と危機に立つ「教職の専門性」』,学文社,2020年
・ 浜田博文・諏訪英広編著,『校長のリーダーシップ―日本の実態と課題―』,学文社,2024年
現在、院生指導にあたるスタッフは、1998年9月に本学に着任した浜田博文教授である。
本研究室の出身者は、現在、全国の研究・教育機関に所属しながら、学界の第一線で活躍している。過去20年ほどの間の出身者の現在の在職先は、北海道大学、盛岡大学、茨城大学、常磐短期大学、独立行政法人教職員支援機構、共愛学園前橋国際大学、東京学芸大学、明治学院大学、上越教育大学、静岡大学、名古屋短期大学、大阪教育大学、関西外国語大学、大阪国際大学短期大学部、鳴門教育大学、鳥取環境大学、沖縄国際大学、などである。
所属院生とテーマ
院生氏名 |
研究テーマ |
奥田修史(博士後期課程、独立行政法人教職員支援機構) |
アメリカの幼少接続期に焦点化した初等教育教員養成に関する歴史的研究 |
木下 豪(博士後期課程、独立行政法人教職員支援機構) |
地域住民の学校参加の実質化に向けた学校ガバナンスの可能性と課題 |
毛 月(博士後期課程) |
現代中国における「薄弱学校」の改善に関する研究 |
史 嘉宜(博士後期課程) |
中国の「学校経営の自主性」の確立に向けた校長職の役割に関する研究 |
藤垣 結髪(博士後期課程) |
現代の小学校指導組織改革に関する研究 |
小野明日美(博士後期課程) |
アメリカにおける公立オルタナティブ・スクールの形成過程に関する研究 |
中村雄一郎(博士後期課程) |
私立中学校・高等学校における教員の勤務実態と身分保障に関する研究 |
須藤爽(博士後期課程) |
高等学校英語科における教育内容の質保証に関する研究 |
曾根杏樹(博士後期課程) |
教師の職能発達におけるTeacher Agency発揮を促進する条件に関する研究 |
𠮷川麻紘(博士後期課程) |
韓国の革新学校における子どものエージェンシーを育成する学校参加に関する研究 |
堀井美里佳(博士前期課程) |
教員政策及び教育問題が生じるメカニズムに関する研究 |
池田竜黄(博士前期課程) |
子どもを包摂する学校づくりに関する研究 |
唐紫維(博士前期課程) |
現代中国の中等教員養成における修士レベルのカリキュラム改革に関する研究 |
箕輪憲宏(博士前期課程) |
学校組織における「心理的安全性」と教員の相互行為に関する研究 |
研究室活動の特色
教育学学位プログラム博士後期課程と博士前期課程の教育基礎科学・次世代学校教育創成・国際教育の3サブプログラムの院生・研究生、および教育学類生の研究会を毎週木曜日に行っている。そこでは、各自の個人研究にかかわる問題意識や研究の課題・対象・方法などについて自由に議論しつつ、本人の問題意識を第一に尊重して最大限に生かす方向で指導している。博士前期課程の院生は修士論文、教育学類の学生は卒業論文の作成に向けて、他の院生・学生たちとともに議論に参加している。このほか、各院生・学生は、学術雑誌への投稿論文や学位論文の作成にかかわって、いつでも必要に応じて個別指導を受けることができる。
また、東京教育大学以来の本研究室出身者を中心とする大塚学校経営研究会(機関誌『学校経営研究』)の研究例会(年6回、うち2回は合宿)に参加する。同研究会には、日本の学校経営研究の第一線で活躍する研究者に加えて、豊富な実践経験をもつ現職・退職教員等が参加しており、毎回の研究例会では、最先端の情報に接しつつ多様な視点から研究的刺激を受けることができる。
2012年度から、年度末に研究室紀要として『学校経営学論集』を発行している。
学生へのアピール
本研究室での研究指導は、本人の問題意識を大切にし、それをできる限り生かして発展させることを基本にしている。したがって、これまでの出身者や現院生の研究テーマはかなり幅広い。指導できる主な領域を例示すると、教職員の養成・研修、学校評価、学校経営の理論、学校経営の制度・政策、学校論、教職論、学校管理職論、学校組織、学校改善、学校選択、学校参加、教職員人事、学年経営、学級経営、指導組織、カリキュラム経営、学校事務、地域教育経営、指導行政などがある。研究方法としては、歴史的研究、比較的研究、理論的研究、実証的研究など多彩なアプローチが可能である。
学校経営研究室が目指すもの
創設以来150年以上の歳月を重ねて発展してきた近代学校制度とそれに連関する諸システムは、多くの面で課題を抱えている。国の政策は次々と更新され、学校教育のシステムは未曾有の転換期にあるといえる。そのなかで、学校経営の実践と研究をとりまく状況も大きく変わりつつある。そのような時にこそ、学校経営の現実を冷静に捉え、将来を展望し、その可能性を切り拓いていくことに資する研究が求められている。個々の学校の自律性を高めて学校教育を元気づけることができる研究に取り組んで、常にチャレンジを続けたい。そのために、学校教育を担うさまざまな人々や、公教育の発展にかかわる社会の幅広い分野との交流回路を絶えず開拓し発展させながら、研究の視野と可能性を広げていくことが大切だと考えている。